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秋田地方裁判所 昭和37年(行)4号 判決 1963年2月25日

原告 原田利良

被告 秋田大学学長

訴訟代理人 新岡栄治 外一名

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

本件訴状の記載によれば、原告の求める裁判は、「被告が昭和三五年三月原告に対してした原告を秋田大学の学籍から除籍するとの処分は無効であることを確認する。被告は原告に対し金一万一、一〇〇円を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」というのであり、その請求原因は、

一  原告は秋田大学の学生であるが、被告は昭和三五年三月原告に対し原告を同大学の学籍から除籍するとの処分をした。しかし、被告は原告に対し右処分を正式に告知しないし、原告が処分理由の説明を求めても何等の応答をしないのみならず、右処分は審理機関の適正な審議を経ずにその職権を濫用した不正な決定に基いてなされたものであるから無効である。

二  原告は右処分がなされる以前、秋田大学に対し編入学検定料一、〇〇〇円、入学金一、〇〇〇円、授業料九、〇〇〇円、誠身寮費一〇〇円以上合計金一万一、一〇〇円を支払つた。しかるに、原告は被告の右違法な処分によつて同大学における学習を妨害され、その結果右同額の損害を蒙つた。

よつて、右処分の無効確認と損害賠償として右同額の金員の支払を求める。

というにある。

職権をもつて本件訴が適法であるかどうかを審按するに、国立大学の学長が当該大学の学生を除籍する行為は、当該学生を国の営造物たる国立大学の利用関係から一方的に排除する効果をもつものであるから行政事件訴訟法にいわゆる行政処分というべきであるが、行政処分の無効確認訴訟はその処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴によつてその目的を達することができないときに限り許される(同法第三六条)ものであるところ、原告は被告のした除籍処分の無効を前提として、国を被告として、秋田大学の学生たる身分を有することの確認を求める等の現在の法律関係に関する訴によつて本件無効確認の訴と同じ目的を達することができるのであるから、本件無効確認の訴は不適法である。

又、本件損害賠償請求の訴については、賠償義務の主体となり得る国を被告として提起したのであれば格別、行政庁である本件被告は当事者たる適格を有しないから、右訴も又不適法である。

しかして、右の欠缺はいずれも補正することができないものであるから、本件訴は口頭弁論を開くまでもなく、いずれも却下すべきである。

よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 斎川貞造 渡辺均 橘勝治)

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